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薬剤師のフレグランスブランド・Ph.fume の解説ブログ、香料原料の紹介シリーズ記事です。
今回は古くから香水や紅茶にフレッシュな香りを付けるために利用されていたベルガモットについて解説していきます。
プロフィール

ミカン科の高木

ベルガモットは、ミカン科の植物です。
ライムとレモンの交配種と言われており、樹高3mほどにまで育ちます。香りのよい白く小さな花を付けますが実を付ける確率はかなり低く、開花するには年間気温が10℃~12℃以下にならない温帯性・熱帯性の気候である必要があります。ベルガモットという名前はイタリアの小都市・ベルガモに由来していると言われています。
産地はイタリア

香料として利用されるベルガモットは、主にイタリアで栽培されています。
気候などの条件を満たし、古くから栽培・利用をしてきたイタリア南部のカラブリア地方という場所で香料原料の80%ほどが栽培されています。18世紀にドイツではじめてオーデコロンが作られたとき、主要な香料としてイタリアのベルガモットが選ばれました。ナポレオンやゲーテといった著名人にも愛用され、現代においても香粧品に広く利用されています。
表面がデコボコした緑~黄色の果実

ベルガモットの香料は、表目がデコボコした緑~黄色の果実から抽出されます。
果実は8~10cmほどにまで育ち、熟していくにつれて緑色から黄色に変色していきます。果肉は苦味と酸味が強く、食用としてはほとんど利用されません。しかし、果皮には精油の分泌細胞が多く含まれておりよい香りを持っています。
圧搾法でエッセンシャルオイルを抽出

ベルガモットのエッセンシャルオイルは、果皮に圧搾法を用いることで抽出されます。
果皮の色素成分を含んでいるのでエッセンシャルオイルも緑~黄色に色付いています。収率は0.5%ほどで、果皮100gから0.5gのエッセンシャルオイルを抽出することができます。非常に良い香りを持つので、香粧品だけではなく紅茶や食品の香り付けにも利用されています。
エッセンシャルオイルの成分

リモネン | シトラスの香り |
柑橘類に含まれる代表的な成分。強いレモンの香りを持つ。ポリスチレン樹脂を溶かす作用があるので洗剤や接着剤として利用されている。 |
酢酸リナリル | グリーンの香り |
ベルガモットやラベンダーの主な香り成分。シトラス・グリーンな風味の香りを持つ。リナロールとともに含有されていることが多い。 |
リナロール | フローラルの香り |
たくさんの花の精油に含まれている成分。ラベンダーのようなフローラルな香りを持つ。植物内でビタミンA・ビタミンEを合成するときの中間体でもある。 |
注意事項

ベルガモットエッセンシャルオイルには光毒性という注意すべき特性があります。成分の項で挙げたベルガモテンとベルガプテンと呼ばれる成分は、紫外線のエネルギーを自身に溜め込む性質を持っています。なので、皮膚に付着した状態で紫外線を浴びるとエネルギーを溜め込んだベルガモテンなどが皮膚にダメージを与えてしまい、シミや炎症の原因となってしまいます。
香水やアロマスプレーなどの使用では光毒性があらわれることはまずないと考えられます。しかし、アロマセラピーなどで皮膚に直接塗布した場合、少なくともは2時間は日光に当たらないようにしましょう。 ちなみに、光毒性の原因となるベルガモテン・ベルガプテンが除去されたFCFエッセンシャルオイルという製品もあります。 |
香りのスペック

ベルガモットの香りは、5~10分の間に強く感じるトップノートに分類されます。エッセンシャルオイルに含まれる成分に小さな化合物が多いので、香りはすぐに揮発して拡がります。また、香りの強さは普通程度です。他の香料と混ぜるときはもう一方の香りの強さにも影響を受けますが、1:1 の比率の混合からはじめ、自分の好きな香りの比率に調整してみましょう。
香りの表現のキーワード

- 表現に欠かせないキーワード
- ・グリーン
・シトラス
・フレッシュ
- よく用いられるキーワード
- ・甘い
・落ち着き
・爽快さ
・優しい
- 関連のあるキーワード
- ・気品
・シプレー
・シャープ
・スパイシー
・デリケート
・苦い
・深い
・フゼア
・フルーティ
・フローラル
・ポジティブ
・リラックス
相性のいい香り
ベルガモットはシトラス、フローラル、グリーンといった多くの要素を含んでいます。そのため、相性のいい香りはたくさんあります。
![]() | | トップノート |
オレンジ ユーカリ レモン |
![]() | | ミドルノート |
イランイラン ラベンダー ネロリ |
![]() | | ラストノート |
サンダルウッド シダーウッド パチュリ |
筆者オススメブレンド | |
ベルガモット × イランイラン イランイランの持つ濃厚な甘い香りを邪魔することなくシトラスの風味をプラスすることで上品な香りに変化します。 | |
ベルガモット × パチュリ 墨や濡れた土のような香りを持つ単体ではクセのあるパチュリの香りに心地よい清涼感を与え、上品なハーブを思わせる香りに変化します。 |
代表的な香水
クラシック アルティメイト
(CLEAN)
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清潔感にしなやかさと凛々しさを併せ持つ、知的で成熟した大人を思わせる香り。
新しい香水の教科書|小磯良江
![]() | | トップノート |
イタリアンベルガモット ライム レモン |
![]() | | ミドルノート |
チュベローズ ネロリ ホワイトローズ |
![]() | | ラストノート |
ムスク |
リザーブ アクアネロリ
(CLEAN)
画像クリックで購入ページへ
地中海のシトラスの風と青い海を思わせる、シトラスとフローラルを感じる香り。
新しい香水の教科書|小磯良江
![]() | | トップノート |
シシリアオレンジ ベルガモット マンダリン |
![]() | | ミドルノート |
ジャスミン ネロリ ラベンダー |
![]() | | ラストノート |
アクアムスク アンバー サンダルウッド |
参考文献
* バーグ文子「アロマテラピー精油辞典」, 成美堂, 2022年06月20日
* 平山令明 [「香り」の科学 ] , 講談社, 2017年06月20日
* 中島基貴「香料と調香の基礎知識」, 産業図書, 1995年06月21日
* 小磯良江「新しい香水の教科書」, マイナビ出版, 2022年06月30日
* アネルズあづさ「アネルズあづさの精油ブレンドバイブル」, 河出書房新社, 2016年10月30日
* アネルズあづさ「香りを楽しむ特徴がわかるアロマ図鑑」, ナツメ社, 2023年01月04日
* 林真一郎「世界一やさしい!アロマ図鑑」, 新星出版社, 2020年08月25日
* フレディ・ゴズラン, グザビエ・フェルナンデス「調香師が語る香料植物の図鑑」, 原書房, 2013年05月30日