酸化防止剤が食品に及ぼす影響とは?薬剤師が分かりやすく解説

薬剤師
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食品を酸化から守る成分。

あらゆる食品に添加物として加えられている酸化防止剤。食品の劣化を防いでいる成分というイメージが強いのではないでしょうか?

具体的に酸化防止剤はどのように食品に影響しているのでしょうか?

  • 酸化防止剤が食品に及ぼす影響とは?
  • 食品の酸化ってなに?
  • 酸化防止剤の種類って?
  • 酸化防止剤は身体に悪くないの?
モーリー
モーリー

酸化防止剤について解説していきます!

それは食品の酸化を防ぐ物質

酸化防止剤は、文字通り食品の酸化を防止する物質になります。よく見るものではビタミンCやビタミンEなどがあります。

食品中の成分が酸化されると、食品の色や味などが変わってしまったり、場合によっては有毒な物質が生成してしまって腹痛など身体に悪い影響を及ぼす場合もあります。

それらを防止するために、酸化防止剤は自らを犠牲に酸化反応を止めることによって食品中の成分を酸化から守っています。

そんな酸化防止剤は食品だけではなく、化粧品やボディソープなどにも添加されています。今回は食品における酸化防止剤のはたらきについて解説していきますね。

酸化防止剤が防いでくれる食品の酸化、それは具体的にどういう現象なのでしょう?

食品の酸化とは

 食品の油分と酸素が反応

そもそも酸化反応とはなんでしょうか?
答えは簡単、酸素がくっつく反応のことです。食品では油分が酸化されることが問題になってきます。油分は構造中に酸素がくっつくことの出来る箇所をたくさんもっているため酸化を受けやすいのです。

揚げ物をした後に使った油を放置しておくと、イヤな臭いがしてきたり色が濃くなったりしたのを見たことある方も多いのではないでしょうか?あれがまさに油分の酸化反応なのです。

そんな反応が食品中に存在する油分にも起こるわけです。結構マズい事が起こっている感じがしますよね。実際その通りで身体に有毒な物質も生成するので、油分の酸化が進んだ食品を大量に摂取すると腹痛や嘔吐などを引き起こしてしまいます。

ちなみに、空気中の酸素によって油分が酸化されることを油分の変敗といいます。一方、腐敗は食品中のタンパク質が微生物の酵素によって分解されることで起こります。

油分と酸素が反応するとはいうものの、一体どのような反応が起こって、それによってどんな物質が出来てしまうのでしょうか?

 油分の酸化で食品はこうなる

今回は食品中に含まれている身近な油分、リノール酸の酸化反応について見ていきましょう。

リノール酸の酸化反応
リノール酸の酸化反応

リノール酸の酸化反応ではこのような反応が起こります。
酸化反応が進んで油分が分解されていくと、化合物の大きさが小さくなっていって変色したりイヤな臭いを放ったり人体に有毒な成分になったりするわけです。

この酸化反応は、酸素と反応できる2重結合を多く持つ不飽和脂肪酸という油分で起こりやすく。リノール酸やαーリノレン酸といった大豆などの植物からとれる油分に多く含まれています。

なのでこれらの油には酸化防止剤がたくさん使われています。それを証拠に、料理油はボトルのフタを開けても長い間、外見の変化やイヤな臭いがすることなく使えますよね。

ちなみに、酸化防止剤は熱によって分解してしまい効果がなくなるものが多いので、揚げ物をした後の油からイヤな臭いがしてくるのは酸化防止剤が分解されて急速に酸化反応が進むのも原因の1つです。

 食品の酸化を防ぐには

食品の酸化を起こさないためには、

  • 遮光
  • 低温保存
  • 酸素を遮断
  • 酸化防止剤を添加

このような対策があります。

遮光と低温保存については、酸化反応は光と熱によって進むのでこれらを与えないことによって反応を抑える方法です。そして酸化反応は酸素がないと進まないので、真空包装などの酸素がない環境では反応は進みようがありません。

酸化防止剤は先ほどあげた通り、自身を犠牲に酸化反応を止めることで食品の酸化を防いでいます。健気な献身によって私たちの食事は美味しく保たれているわけですね。

そんな酸化防止剤ですが、一体どのような種類のものがあるのでしょうか?

酸化防止剤の種類と酸化

実は、酸化防止剤はたくさんの方法で分類することが出来るのですが、今回は酸化防止剤が天然由来合成されたものなのかで分けて紹介していきますね。

 天然由来の酸化防止剤

天然由来の酸化防止剤
天然由来の酸化防止剤

天然由来の酸化防止剤としては、

  • ビタミンC (アスコルビン酸)
  • ビタミンE (トコフェロール)

が有名なもので、これら2つは人体への安全性が高いので酸化防止剤としてよく使われています。実際の成分表示でもよく見かけますよね。

ちなみに、ビタミンCはレモンやアセロラなど、ビタミンEはアーモンドや小麦胚芽などに多く含まれています。

 合成された酸化防止剤

合成された酸化防止剤
合成された酸化防止剤

合成された酸化防止剤としては、

  • BHA (ブチルヒドロキシアニソール)
  • BHT (ジブチルヒドロキシトルエン)
  • 没食子酸プロピル

などがあります。聞いたことのないものばかり……なんて方がほとんどだと思います。

これらの酸化防止剤は、天然のものと比べて酸化を防ぐ能力が高いのが特徴で、食品だけではなく化粧品にも使われることもあります。

 酸化防止剤の効果の仕組み

酸化防止剤はどのように酸化反応を止めているのでしょうか?

今までにあげた酸化防止剤の構造に赤い丸がついていますよね?実はそこを使って酸化反応を止めているのです。今回はビタミンEの酸化について見ていきましょう。

ビタミンEの酸化防止作用
ビタミンEの酸化防止作用

このようにビタミンEは自らを犠牲に食品中の油分を酸素から守っているのです。他の酸化防止剤でも赤い丸の部分で同じ反応が起こっています。

酸化防止剤は身体に悪い?

食品を酸化から守ってくれている酸化防止剤ですが、人体に悪い影響はあるのでしょうか?
こちらについても天然由来のものと合成されたものとで分けて考えていきましょう。

 天然由来の酸化防止剤

天然由来の酸化防止剤は身体になんの影響もありません。それどころか不足すると健康に支障をきたすほどで、ビタミンCやビタミンEはヒトの身体をも酸化から守ってくれているのです。ビタミンEを例に出すと、体内の脂質を酸化から守ることで動脈硬化や血栓生成の予防などの役割を担っています。

摂取するべきビタミンの量と比べれば、酸化防止剤として配合されているビタミンの量は微々たるものでビタミンの補給にすらなりません。つまり天然由来の酸化防止剤は身体にはなんの影響もないのです。

 合成された酸化防止剤

一方、合成された酸化防止剤については……なんだか体に悪そうと考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?しかし、結論から申し上げると、使用しても人体に悪い影響はないと判断されています。

しかし、昔にBHAやBHTを使った動物実験が行われた際、なんと発がん作用胎児の正常な発育を阻害する作用などが見られたのです。めちゃくちゃ怖い作用があったのですね。

さらにしかし、この作用は食品添加物として使われる数万倍の量のBHA・BHTを投与したときに認められたもので、食品添加物として使われる量を投与したときにはなんの影響も見られなかったのです。

なので、昨今の日本では添加物として使う分には毒性がないので使ってもよいということになっているのです。

筆者のひとこと

昨今、ありとあらゆるものに添加されている酸化防止剤。食品のみならず、ありとあらゆるものを劣化から守ってくれる素晴らしいものですよね。それも自己犠牲の上に成り立っていると考えたら頭が下がる思いです。

実は今回の合成酸化防止剤のように、高濃度では毒性があるけど低濃度では大きな影響がないので使ってもよいという成分はたくさんあるので、合成成分に神経質になりすぎてストレスをためるよりも、実験では影響がないと判断されたので大丈夫という楽観も大事なのかもしれません。

……必要以上に心配してストレスで体調を崩しては元も子もないですからね。

まとめ

  • 酸化防止剤は自らを犠牲に反応を受けることで食品の酸化を防ぎ、色や味などの劣化を防いでいます。
  • 食品の酸化とは食品中の油分と酸素がくっつく反応のことで、大豆油など植物由来の油が受けやすいです。また、油分の酸化によって人体に良くない成分が生成し、腹痛や嘔吐などを引き起こすこともあります。
  • 油分の酸化は、遮光低温保存酸素を遮断酸化防止剤の添加などによって防げます。
  • 天然酸化防止剤は、人体に必要不可欠なビタミンなので人体に悪い影響はありません
  • 合成酸化防止剤では、高濃度の酸化防止剤を用いた動物実験では発がん性などが認められたものの、添加物として使う濃度では影響は認められなかったため人体に影響はないと判断されています。
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