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【イランイラン】その名の由来は「花の中の花」、エキゾチック・スイート・フラワーについて徹底解説!

Jeje !

薬剤師のフレグランスブランド・Ph.fume の解説ブログ、香料原料の紹介シリーズ記事です。

今回は、エキゾチックで官能的な香りを持つフラワー、イランイランについて解説していきます。

プロフィール

イランイラン イメージ

バンレイシ科の高木

アイコン 高木

イランイランはバンレイシ科と呼ばれる科に属する高木です。
バンレイシ科の植物は、八重山諸島に自生するクロボウモドキという植物以外は日本にはありませんが、ヒマラヤからオーストラリアといった熱帯な気候の国に広く分布しています。イランイランの木は樹高20mほどにまで成長し、傘のように横に広く成長するので下にすっぽりと人が入れるほど大きくなります。

産地はコモロ諸島

アイコン コモロ諸島

香料として利用されるイランイランは、主にコモロ諸島で栽培されています。
花の収穫は、イランイランの花の香りが最も強い夜明けから午前9時までに行われます。成熟した花の中でも、特に花びらの根元に小さな印があらわれている上質な花びらだけが収穫されます。

カールした黄色の花びら

アイコン 花・黒

イランイランのエッセンシャルオイルは、カールした黄色の花びらから抽出されます。
ヒトデのような外見の細長くねじれた花びらは白から緑色になり、その後に黄色へと成熟していきます。イランイランという名前は、フィリピンで話される言語のひとつであるタガログ語の「花の中の花」を意味する「ilang ilang」に由来しています。魅惑的な香りを持っているので、インドネシアではイランイランの花を結婚初夜のベッドに敷き詰める習慣があります。

水蒸気蒸留法でエッセンシャルオイルを抽出

アイコン 水蒸気蒸留法・花

イランイランのエッセンシャルオイルは、花びらに水蒸気蒸留法を用いることで抽出されます。
イランイランのエッセイシャルオイルは抽出時間ごとの品質によって5段階のグレードに分けられ、「エクストラ」「ファースト」「セカンド」「サード」「コンプリート」が存在します。エクストラは蒸留開始から30分~1時間に得られるエッセンシャルオイルで非常に濃厚で上品な香りを持つので古くから高級な香水に利用されてきました。

エッセンシャルオイルの成分

イランイラン オイル成分
安息香酸ベンジルバルサミックの香り
イランイランやジャスミン、ベンゾインの主な香り成分。重厚な甘い香りを持つ。また、バルサミックでハーバルな風味も持つ。
リナロールフローラルの香り
たくさんの花に含まれている化合物。ラベンダーのようなフローラルな香りを持つ。植物内でビタミンA・Eを合成するときの中間体でもある。
安息香酸メチルフルーツの香り
マンゴーやキウイといった果物だけでなくイランイランの花にも含まれる香り成分。甘いフルーティーな香りを持つ。
酢酸ベンジルフローラルの香り
イランイランやジャスミンといった花だけでなくストロベリーやアップルなどの果物にも含まれる香り成分。甘いジャスミンのような香りを持つ。

注意事項

アイコン 注意

イランイランエッセンシャルオイルはとても強い香りを持っているので、イランイランエッセンシャルオイル濃度が高いアロマオイルの香りを長時間かぎ続けることで、頭痛や吐き気を起こす恐れがあります。

イランイランエッセンシャルオイルを使用する際は、他の精油の半分以下の用量からはじめ、そこから香りの強さを調整してください。用量の調整が難しければアロマセラピー関連の書籍に記されているアロマオイルのブレンドを参考にするのもオススメです。

香りのスペック

イランイラン 香りスペック

イランイランの香りは、30分程度経過してから香りを感じるミドルノートに分類されます。その中でも香りの持続時間の長いラストノート寄りのミドルノートになります。エッセンシャルオイルに含まれる成分は香り成分において普通程度の大きさの化合物が多いので、香りはトップノートよりも長い時間をかけて揮発して拡がります。また、香りの強さはとても強く、他の香料と混ぜるときはもう一方の香りの強さにも影響を受けますが、1:2~1:3ほどのイランイランが少ない分量で混合を開始し、そこから自分好みの香りに調整してみましょう。

香りの表現のキーワード

イランイラン 香りの表現のキーワード
表現に欠かせないワード
甘い
エキゾチック
フローラル
よく用いられるキーワード
トロピカル
濃厚
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妖艶
関連のあるキーワード
アジア
オリエンタル
グリーン
高級
上品
スパイシー
強い
バルサミック
複雑
芳醇
魅惑
リラックス

相性のいい香り

ブレンドの主役にするとイランイランの香りが立ちすぎることが多いので、苦みやグリーン感の強い香りとブレンドし、イランイランの濃厚な甘さを引き立てる調香がオススメです。

アイコン トップノート|  トップノート  
オレンジ
スペアミント
ベルガモット
アイコン ミドルノート|  ミドルノート  
クラリセージ
ジャスミン
マジョラム
アイコン ラストノート|  ラストノート
サンダルウッド
パチュリ
筆者オススメブランド
イランイラン × ジャスミン
似た香りの花であるジャスミンを加えることでイランイランの重厚な甘さにさらに深みが加わり、より上品で濃厚なフローラルの香りに変化します。
イランイラン × マジョラム
さっぱりとした甘みのあるグリーンの香りを持つマジョラムを加えることで、イランイランの持つ重厚な甘さに軽やかな印象を与え、フレッシュなフローラルの香りに変化します。

代表的な香水

デューン
(DIOR)

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グランヴィルの海辺を思わせる、繊細で明るいオリエンタル調のオセアニック フローラルの香りが、優雅な気分へと導きます。

DIOR|デューンの世界観
https://www.dior.com/ja_jp/beauty/フレグランス/ウィメンズ/デューン
アイコン トップノート|  トップノート  
アルデハイド
ピオニー
ベルガモット
マンダリンオレンジ
ローズウッド
アイコン ミドルノート|  ミドルノート  
イランイラン
ジャスミン
ニオイアラセイトウ
ユリ
ローズ
アイコン ラストノート|  ラストノート
アンバー
オークモス
サンダルウッド
パチュリ
バニラ
ベンゾイン
ムスク

オルガンザ
(GIVENCHY)

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オルガンザはすべての女性が持つ美しさと女神のような慈愛に満ちた本質を捉え、具現化したオリエンタルフローラルです。

Celes(セレス)|Givenchy – Organza(ジバンシイ – オルガンザ)
https://www.celes-perfume.com/product/givenchy-organza/
アイコン トップノート|  トップノート  
オレンジブロッサム
ガーデニア
ベルガモット
ナツメグ
アイコン ミドルノート|  ミドルノート  
クルミ
イランイラン
ジャスミン
ハニーサックル
チュベローズ
アイコン ラストノート|  ラストノート
アンバー
シダーウッド
バニラ

参考文献

*バーグ文子「アロマテラピー精油辞典」, 成美堂, 2022年06月20日
*平山令明 [「香り」の科学 ] , 講談社, 2017年06月20日
*中島基貴「香料と調香の基礎知識」, 産業図書, 1995年06月21日
*小磯良江「新しい香水の教科書」, マイナビ出版, 2022年06月30日
*アネルズあづさ「アネルズあづさの精油ブレンドバイブル」, 河出書房新社, 2016年10月30日
*アネルズあづさ「香りを楽しむ特徴がわかるアロマ図鑑」, ナツメ社, 2023年01月04日
*林真一郎「世界一やさしい!アロマ図鑑」, 新星出版社, 2020年08月25日
*フレディ・ゴズラン, グザビエ・フェルナンデス「調香師が語る香料植物の図鑑」, 原書房, 2013年05月30日

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